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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つとされています。目や耳の周り、首、膝や肘の内側など特徴的な部位に繰り返しかゆみのある湿疹ができ、大人なら6ヶ月以上、子供なら2ヶ月以上症状が「よくなったり悪くなったりを繰り返す」のが特徴です。

原因、悪化因子はさまざまで患者さんによって異なりますが、そのひとつとしてあげられるのが、皮膚のバリア機能の低下です。角質にあるセラミド脂質成分や皮膚の水分量が少ないと、細胞同士の隙間があいて水分が逃げやすくなり、皮膚がカサカサになって皮膚が外部からのアレルゲンなどの異物が入りやすくなり、炎症や湿疹になりやすくなります。

また、患者さんの8割が持つと言われているアトピー素因は本人や家族が喘息、花粉症、食物アレルギーなど何らかのアレルギー疾患がある場合です。外部の刺激に対して作られるIgE抗体(※)が通常より多く作られる体質だと少しの刺激にもIgE抗体が作られ、ヒスタミン成分を放出してかゆみを引き起こします。

※Ige抗体…外部から侵入してきた抗原(アレルゲン)に対し、人体は抗体を作って反応します。抗体には5種類あり、IgEはアレルギーや気管支喘息の抗体になります。

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アトピー性皮膚炎の治療法(リアクティブ療法)

アトピー性皮膚炎の治療法には、症状が出たときに治療する「リアクティブ療法」と、症状が引いてもしばらく治療を続ける「プロアクティブ療法」の2種類があります。
リアクティブ療法では炎症を抑え、ダニやハウスダストなど人によって異なる悪化因子を取り除き、保湿剤によるスキンケアを続ける事で治療を進めます。
かつては18~20歳くらいでほとんど治るといわれていましたが、 実際はその年齢になっても治らない患者さんや、一度治っても成人してから再発する患者さんもいます。長期的な治療とケアが必要となることが多いので、主治医との信頼関係はとても大切です。分からないことや困っていること、気になることなど、なんでも相談してください。

1.炎症を抑える

炎症があるときによく使用されるステロイド外用薬は、炎症やかゆみを抑える効果があります。ステロイド外用薬は5段階の強さに分けられ、体の部位や、年齢などを考慮して、薬の強さや塗る回数を決めます。お顔は毛穴が多く薬の吸収が良いので弱いものを、吸収の少ない手のひらや足には強いものを。症状が改善したら弱いレベルのステロイドや免疫抑制剤であるプロトピック外用薬に切り替えるなど、医師の指示に従ってきめ細かく使い分けていきます。かゆみが強い場合、外用薬の他に抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬など内服薬も併用します。
プロトピック軟膏の使用のタイミング
  1. ①ランクの強いステロイド外用薬に引き続いて使用し、寛解導入を確実にする方法
  2. ②症状再燃に合わせて可及的早期に使用することで、ステロイド外用薬を使用せずプロトピック軟膏単独で再燃を鎮静化する方法
  3. ③再燃しやすい部位に、再燃抑制を目的としてプロトピック軟膏を週2、3回間欠的に継続する方法(プロアクティブ療法)

監修:自治医科大学 皮膚科学 教授 大槻マミ太郎 先生

2.悪化因子を取り除く

原因や悪化因子を取り除くには、ダニやハウスダストが原因になることがあるので室内にほこりがたまらないように頻繁に掃除し、カーペットや布製家具はできるだけ使用しないように心がけます。家具は晴れた日によく干して、室内は風を通して適温・適湿を保ってください。犬・猫など動物の毛もアレルギーになることが多く、ダニ増殖の原因にもなります。皮膚を汗や汚れから守るには、毎日の入浴・シャワーで清潔に保つことが大切ですが、熱すぎるお風呂はかゆみを引き起こすので注意が必要です。

3.スキンケアをする

スキンケアは皮膚の清潔を保ち、保湿剤は入浴後5分以内に塗るなど、しっかり保湿をすることが基本です。保湿剤は乳液タイプやクリームタイプ、軟膏タイプなど季節や肌の状態に合わせて処方します。せっけん選びでは刺激の強い薬用せっけん、皮脂を取り除き皮膚のバリア機能を低下させる合成界面活性剤を使用したボディーソープは避け、固形せっけんを。頭髪は低刺激のシャンプーを使い十分に洗い流します。洗剤も蛍光剤や漂白剤をなるべく使用しないものがおすすめですが、すすぎをしっかり行うことで皮膚への悪影響を抑えることができます

アトピー性皮膚炎の治療法(プロアクティブ療法)

炎症期にステロイド外用薬などの抗炎症外用薬で湿疹などの炎症を抑えるのはリアクティブ療法もプロアクティブ療法も同じです。
プロアクティブ療法では症状の改善後、もともと炎症のあった部位に抗炎症外用薬を週2回ペースでほどのペースで定期的に塗布し、炎症のない状態を維持します。また、保湿外用薬も併用していきます。
何回も繰り返して湿疹などの炎症が出る方には、プロアクティブ療法をおすすめします。

治療メニュー

保険内服薬・外用薬

アトピー性皮膚炎の原因はさまざまですが、いずれの場合も保湿外用薬や内服薬、ステロイド外用薬など、原因や症状に合った方法で治療を進めます。体質が原因の場合は抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬などの内服薬を中心に治療します。

保険モイゼルト軟膏

moi モイゼルト軟膏は「PDE4阻害剤」というステロイド外用剤や免疫抑制外用剤などと異なる新しい作用を持つ塗り薬です。
PDE4とは、炎症細胞において炎症を抑えるシグナルを分解し、炎症を増幅させてしまう酵素のことで、アトピー性皮膚炎の患者さんの炎症細胞で増えていることが知られています。
モイゼルト軟膏はPDE4を阻害することで炎症抑制シグナルを上昇させ、アトピー性皮膚炎の炎症とかゆみを改善します。

塗布回数 1日2回
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保険コレクチム軟膏

コレクチム軟膏はステロイド外用剤や免疫抑制外用剤とは異なる作用機序でアトピー性皮膚炎の症状を緩和する新しい塗り薬です。
皮膚から浸透し、炎症を引き起こす原因となる免疫細胞のJAK経路から伝達されるシグナルをブロックすることで、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善します。

塗布回数 1日2回

保険デュピクセント

デュピクセントはアトピー性皮膚炎の病態を悪化させる原因物質のひとつ「インターロイキン-4(IL-4)」および「インターロイキン13(IL-13)」の働きを抑えることによって症状を改善する注射薬です。
ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤など、既存治療で適切に治療をおこなっても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ場合に使用されます。

当クリニックでは自己負担の軽減の観点から、高額療養費制度の適用となるよう自己注射での治療となります。

使用回数 初回2本(当院にて)
2回目以降は1回1本を隔週ペース(自己注射)

保険アレルギー検査

保険適用で受けられるアレルギー検査です。血液から検査を行い、一度に39種類ものアレルゲンについて調べることができます。お子様でも検査可能です。

検査可能なアレルゲン39種
吸入系・その他のアレルゲン ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト、ネコ皮膚、イヌ皮膚、ガ、ゴキブリ、スギ、ヒノキ、ハンノキ(属)、シラカンバ(属)、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、オオアワガエリ、アルテルナリア(ススカビ)、アスペルギルス(コウジカビ)、カンジダ、マラセチア(属)、ラテックス
食物系アレルゲン 卵白、オボムコイド、ミルク、小麦、ピーナッツ、大豆、ソバ、ゴマ、米、エビ、カニ、キウイ、リンゴ、バナナ、マグロ、サケ、サバ、牛肉、鶏肉、豚肉
料金(税込) 保険治療(3割負担の方で¥4,300前後)

保険エキシマライト

最新の紫外線治療器です。ターゲット型光線療法で患部に絞って部分的に光を当てられるので、患部以外への紫外線照射を最小限に抑えることができます。エキシマライトによって完治することはありませんが、かゆみを抑えることが可能です。